9月20日から27日の日程で、アゼルバイジャンの首都バクーで2018年世界柔道選手権大会が開催されました。
(Photo by 全日本柔道連盟)
会場は、National Gymnastics Arena。
男子:優勝 2階級、2位 2階級、3位 3階級 参加9名 入賞(3位以上)7名
女子:優勝 5階級、2位 3階級、3位 1階級 参加9名 入賞(3位以上)9名
男女7階級と男女混合の団体戦で優勝し、8個(15クラス実施)の金メダルを獲得しました。特に女子の活躍は目覚しく、出場した全員がメダルを獲得しました。
男子60キロ級(高藤直寿選手:優勝(2連覇)、永山竜樹選手:3位)
高藤選手、永山選手とも安定した戦いぶりでした。特に高藤選手は、以前のようなガツガツした柔道から落ち着きのある柔道になってきた感じを受けました。後の先ではないのですが、相手の動きに対応して先に攻めると言えばいいでしょうか。対応力が一段と凄みを増した感じです。
永山選手も2回目の世界選手権でメダルを獲得しましたが、高藤選手に敗れてしまい、差を広げられた印象を植え付けてしまいました。惜しい場面がありましたが、高藤選手の読みと反応の速さが上を行きましたね。
外国勢では、いまひとつ目立った選手がいなかったように感じます。
しかし、2020東京では、調子を上げてくる選手や成長してくる選手がいると思います。
女子48キロ級(渡名喜風南選手:2位)
渡名喜選手は厳しい組み合わせをしっかりと勝ち上がり、決勝のBILODID, Daria選手(UKR)と戦いましたが、相性が悪いですね。
勝つには相手の釣手を自由にさせないことですが、これがなかなか難しいです。右の腰技なども取り入れないと、この牙城を崩すのは容易ではないですね。
BILODID, Daria選手は、出だしは硬かったものの徐々に本来の動きが見られ、圧勝といっていい内容だったと思います。暫くは独壇場となりそうです。
オリンピックチャンピオンのPARETO, Paula選手(ARG)、GALBADRAKH ,Otgontsetseg選手(KAZ)、MUNKHBAT, Urantsetseg選手(MGL)なども強いですが、BILODID, Daria選手とはやや差があるように感じました。
男子66キロ級(阿部一二三選手:優勝(2連覇))
前回のインパクトある勝ち方に比べれば落ち着いた内容でしたが、それでも危ない場面がほぼなく、圧勝でした。準決勝のAN, Baul選手(KOR)に手を焼いたものの、しっかりと追い込んで投げて決着しました。グランプリザグレブの敗戦が良い形で現れましたね。
普通にやっていれば、負ける相手はいないと思います。
海外勢との差も感じる内容でした。
女子52キロ級(志々目愛選手:2位、阿部詩選手:優勝(初優勝))
志々目選手、阿部選手ともに決勝進出と、立派な結果でした。特に阿部選手は初出場、初優勝と最高の結果でした。次は今まで以上に研究されてきますので、さらに上をいけるようになって欲しいですね。寝技の進化も見られたのが強みです、立っても寝ても強いと弱点がなくなります。
志々目選手は世界チャンピオンとして、追い込まれても諦めず力を発揮し決勝まで勝ち上がりました。得意技の内股の最後の伸びはなかなか出来るものではありません。
52キロ級は、国内の争いが厳しいので、阿部選手、志々目選手、そして角田選手の3人で切磋卓摩していって欲しいですね。
海外勢は志々目選手を追い詰めたKUZIUTINA, Natalia選手(RUS)、MIRANDA, Erika選手(BRA)が目立ちましたが、日本選手とはやや差を感じたのも事実です。
男子73キロ級(橋本壮市選手:2位)
橋本選手は試合中の怪我や肩の怪我の影響もあり、試合全般に精彩を欠いた印象でした。それでも、しっかりと決勝まで勝ち上がったのですから、その点は良かったと思います。苦しい試合を物にするベテランらしい戦いぶりでした。
初優勝のAN, Changrim選手(KOR)は、ついに頂点を取ったという感じです。今までも実力はありながら、肝心なところで負けるイメージでしたが、先日のアジア大会、今大会と負けなくなってきました。
HEYDAROV,Hidayat選手 (AZE)も今大会は良かったですね。
女子57キロ級(芳田司選手:優勝(初優勝))
今回の芳田選手は、立ち技だけでなく寝技も良かったです。最後の詰めの甘さも見られず、出口選手にも勝ちきりました。立ってよし、寝てよしのいい柔道でした。
出口選手も安定していましたが、今回は芳田選手が一枚上でした。
DORJSUREN, Sumiya選手(MGL)は、やや衰えてきたのでしょうか。DORJSUREN, Sumiya選手に勝ち決勝に勝ち上がったSMYTHE-DAVIS,Nekoda選手 (GBR)、出口選手をあと一歩まで追い込んだSTOOLL,Amelie選手(GER)、団体戦に出場した玉置選手も良かったですね。
男子81キロ級(藤原崇太郎選手:2位)
藤原選手は粘りの柔道で決勝まで勝ち上がりました。日本選手がなかなか勝てない階級で見事でした。決勝は惜しくも敗れましたが、今後が楽しみです。組手を妥協せず、チャンスがあれば寝技で決めるスタイルは大崩れしないと思います。佐々木選手や永瀬選手との代表争いが楽しみです。
オリンピックチャンピオンのKHALMURZAEV, Khasan選手(RUS)の出来はいまひとつで、敗者復活戦で敗退でしたね。昨年のチャンピオンWIECZERZAK,Alexander選手(GER)は準々決勝で敗れ、何とか3位を確保でした。群雄割拠の81キロ級は誰にでもチャンスがあるといってもいいかも知れません。
女子63キロ級(田代未来選手:2位)
AGBEGNENOU, Clarisse選手(FRA)、TRSTENJAK, Tina選手(SLO)、っして田代選手がこの階級の3強で、頭ひとつ抜けています。田代選手は、TRSTENJAK, Tina選手に強くAGBEGNENOU, Clarisse選手に弱い。AGBEGNENOU, Clarisse選手はTRSTENJAK, Tina選手に弱いというように、三竦みの状態ですから、組み合わせが大きいですね。田代選手は、以前よりもAGBEGNENOU, Clarisse選手と戦えるようになってきていますので、2020東京では何とか今回の雪辱を果たして欲しいですね。今大会では、立ち技、寝技ともに抜群でしたから、この流れを継続していけば十分に可能だと思います。この3人の争いはまだまだ続きそうですね。
男子90キロ級(長澤憲大選手:3位)
長澤選手は2回戦、3回戦と順調でしたが、4回戦で疲弊しました。やはりパワー系の相手の対策が重要ですね。ここは何とか凌ぎ切りましたが、準々決勝では力尽きました。その状態から敗者復活戦、3位決定戦とよく勝ち上がり、メダルを獲得しました。今後は、パワー系の相手に組み負けない組み力と、スタミナが課題ですね。技は切れるだけに、それが備われば頂点も見えてくると思います。
海外勢は、昨年の世界選手権でベスト8に残った選手で、今大会でもベスト8に残った選手はTOTH,Krisztian選手(HUN)のみと大幅に入れ替わりました。決勝では敗れたものの、SILVA MORALES,Ivan Felipe選手(CUB)の攻撃的な柔道が魅力的でしたね。
女子70キロ級(大野陽子選手:3位、新井千鶴選手:優勝(2連覇))
大野選手は初の世界選手権ということで、やや緊張もあったでしょうが動きが硬く感じました。海外勢対策という点では、もう1歩だったでしょうかy。組手で後手に回る場面が多かったように感じます。
新井選手は窮地に追い込まれても、絶対に負けないという執念が随所に感じられました。準々決勝の隅落とし、準決勝の内股から大内刈り、決勝の逆転勝ちと何れも窮地に追い込まれてからの勝利でした。
世界チャンピオンになってからの1年間は、国内外の試合でもパッとせずモヤモヤした試合が続いていましたが、それを一気に吹き飛ばしましたね。
海外勢は、決勝を新井選手と争ったGAHIE,Marie Eve選手(FRA)は脅威ですね。ALVEAR,Yuri選手(COL)も体の力が強いです。昨年決勝を争ったPEREZ,Maria選手(PUR)は、やや力が落ちたのでしょうか。いずれにしても、新井選手とGAHIE,Marie Eve選手が中心となりそうな70キロ級です。
男子100キロ級(ウルフ・アロン選手:5位)
怪我から復帰のウルフ選手でしたが、出来は正直いまひとつでした。いつもの力強さに欠け、組手で後手に回るシーンも多く、受けのバランスも悪く感じました。昨年3位のDENISOV, Kirill選手(RUS)に勝ったのは流石ですが、ILYASOV, Niyaz選手(RUS)には一本負けとらしくない試合展開でしたね。3位決定戦も、あっけなく敗れてしまった感じがしました。実力はありますので、もう一度立て直して欲しいですね。
海外勢は、昨年2位のLIPARTELIANI,Varlam選手(GEO)が優勝しましたが、そこまで差があるような感じではなく、この階級も群雄割拠、誰が勝っても可笑しくない階級に感じます。
女子78キロ級(濱田尚里選手:優勝(初優勝))
濱田選手は得意の寝技だけでなく、今大会は立ち技も良かったですね。3回戦では技ありを先制され、さらに内股であわやという場面を上手く切り替えして抑え込んだのは見事でした。(3回戦動画)
準々決勝の寝技への入り方も簡単にやっていました、なかなか出来ないと思います。(準々決勝動画)
準決勝では課題の立ち技で一本勝ちし、決勝はスタミナで押し切りました。正直、優勝は厳しいと思っていた階級でしたが、途中のミスもなく優勝できて良かったですね。
世界チャンピオンのAGUIAR,Mayra選手(BRA)は調子が上がらず、早々に敗退。昨年ベスト8からはVERKERK,Marhinde選手(NED)のみが残ったものの、他は入れ替わっております。この階級も誰が勝っても可笑しくない状況に突入しましたね。
男子100キロ超級(原沢久喜選手:3位、小川雄勢選手:3回戦敗退)
原沢選手は慎重に戦っている印象でした。準々決勝は、勝てる試合を落としてしまった感じです。プレッシャーを掛けようとするあまり、不用意に前に出すぎてしまいましたね。以前の原沢選手では見られなかったミスだと思います。未だに本調子ではないのでしょうが、徐々に上向いている感もありますので、今後に期待したいと思います。
小川選手は勿体無い試合でした。腕の極め方が少し乱暴でしたね。その影響か、団体戦でもパッとしませんでした。海外勢に対抗できる体力とパワー、スタミナを兼ね備えているので、もう一度立て直して欲しいですね。
海外勢は優勝したTUSHISHVILI, Guram選手(GEO)が頭ひとつ抜け出していたように思います。逆にオリンピックチャンピオンのKRPALEK, Lukas選手(CZE)はもう一息でしたね。MOURA, David選手(BRA)、SILVA, Rafael選手(BRA)のブラジル勢、SASSON Or選手(ISR)もパッとしませんでした。
代わりにMOURA, David選手に勝ったOLTIBOEV,Bekmurod選手(UZB)や地元アゼルバイジャンのKOKAURI,Ushangi選手(AZE)の台頭がありましたね。
なかなか苦戦が続く100キロ超級です。
女子78キロ超級(朝比奈沙羅選手:優勝(初優勝))
朝比奈選手は堅実に勝ち上がり、勝ちに徹した試合運びでした。昨年末に無差別級の世界チャンピオンになったので、自信もあったのだと思います。ただ、攻めが遅いのは相変わらずで、指導を先に受ける場面が目立ちました。
海外勢は、息の長いORTIZ,Idalys選手(CUB)が世界ランク1位のKIM, Minjeong選手(KOR)を破り決勝に勝ち上がったのは見事でした。CERIC,Larisa選手(BIH)、SAYIT,Kayra選手(TUR)、KINDZERSKA,Iryna選手(AZE)など、他の階級に比べ比較的メンバーが代わらない傾向にあります。
団体戦では、素根選手も活躍し、朝比奈選手との代表争いが楽しみです。
男女混合団体戦(73キロ級 立川新選手、90キロ級 向翔一郎選手、90キロ超級 原沢久喜選手、小川雄勢選手、57キロ級 玉置桃選手、芳田司選手、70キロ級 大野陽子選手、70キロ超級 素根輝選手、朝比奈沙羅選手)優勝
団体戦はこのような試合形式に慣れている日本チームが優勝しました。通常の団体戦と違い、引き分けがありませんが、ここも戦略の上では面白いですね。
立川選手、玉置選手、素根選手は個人戦に出られなかった悔しさを十分に晴らしたと思いますが、向選手は世界の壁を感じたと思います。小川選手は、ちょっと覇気がなかったですね。
芳田選手の戦いぶりは、堂々としていました。そう考えるとメンタルって大切ですね。
団体戦の大野選手は、諦めない戦いぶりが印象的でした。
グランドスラム大阪や、来年の世界選手権、そして2020東京まで、時間があるようでありませんので、怪我のないように気をつけて稽古に精進して欲しいですね。
頑張れニッポン!
(Photo by 全日本柔道連盟)
会場は、National Gymnastics Arena。
男子:優勝 2階級、2位 2階級、3位 3階級 参加9名 入賞(3位以上)7名
女子:優勝 5階級、2位 3階級、3位 1階級 参加9名 入賞(3位以上)9名
男女7階級と男女混合の団体戦で優勝し、8個(15クラス実施)の金メダルを獲得しました。特に女子の活躍は目覚しく、出場した全員がメダルを獲得しました。
男子60キロ級(高藤直寿選手:優勝(2連覇)、永山竜樹選手:3位)
高藤選手、永山選手とも安定した戦いぶりでした。特に高藤選手は、以前のようなガツガツした柔道から落ち着きのある柔道になってきた感じを受けました。後の先ではないのですが、相手の動きに対応して先に攻めると言えばいいでしょうか。対応力が一段と凄みを増した感じです。
永山選手も2回目の世界選手権でメダルを獲得しましたが、高藤選手に敗れてしまい、差を広げられた印象を植え付けてしまいました。惜しい場面がありましたが、高藤選手の読みと反応の速さが上を行きましたね。
外国勢では、いまひとつ目立った選手がいなかったように感じます。
しかし、2020東京では、調子を上げてくる選手や成長してくる選手がいると思います。
女子48キロ級(渡名喜風南選手:2位)
渡名喜選手は厳しい組み合わせをしっかりと勝ち上がり、決勝のBILODID, Daria選手(UKR)と戦いましたが、相性が悪いですね。
勝つには相手の釣手を自由にさせないことですが、これがなかなか難しいです。右の腰技なども取り入れないと、この牙城を崩すのは容易ではないですね。
BILODID, Daria選手は、出だしは硬かったものの徐々に本来の動きが見られ、圧勝といっていい内容だったと思います。暫くは独壇場となりそうです。
オリンピックチャンピオンのPARETO, Paula選手(ARG)、GALBADRAKH ,Otgontsetseg選手(KAZ)、MUNKHBAT, Urantsetseg選手(MGL)なども強いですが、BILODID, Daria選手とはやや差があるように感じました。
男子66キロ級(阿部一二三選手:優勝(2連覇))
前回のインパクトある勝ち方に比べれば落ち着いた内容でしたが、それでも危ない場面がほぼなく、圧勝でした。準決勝のAN, Baul選手(KOR)に手を焼いたものの、しっかりと追い込んで投げて決着しました。グランプリザグレブの敗戦が良い形で現れましたね。
普通にやっていれば、負ける相手はいないと思います。
海外勢との差も感じる内容でした。
女子52キロ級(志々目愛選手:2位、阿部詩選手:優勝(初優勝))
志々目選手、阿部選手ともに決勝進出と、立派な結果でした。特に阿部選手は初出場、初優勝と最高の結果でした。次は今まで以上に研究されてきますので、さらに上をいけるようになって欲しいですね。寝技の進化も見られたのが強みです、立っても寝ても強いと弱点がなくなります。
志々目選手は世界チャンピオンとして、追い込まれても諦めず力を発揮し決勝まで勝ち上がりました。得意技の内股の最後の伸びはなかなか出来るものではありません。
52キロ級は、国内の争いが厳しいので、阿部選手、志々目選手、そして角田選手の3人で切磋卓摩していって欲しいですね。
海外勢は志々目選手を追い詰めたKUZIUTINA, Natalia選手(RUS)、MIRANDA, Erika選手(BRA)が目立ちましたが、日本選手とはやや差を感じたのも事実です。
男子73キロ級(橋本壮市選手:2位)
橋本選手は試合中の怪我や肩の怪我の影響もあり、試合全般に精彩を欠いた印象でした。それでも、しっかりと決勝まで勝ち上がったのですから、その点は良かったと思います。苦しい試合を物にするベテランらしい戦いぶりでした。
初優勝のAN, Changrim選手(KOR)は、ついに頂点を取ったという感じです。今までも実力はありながら、肝心なところで負けるイメージでしたが、先日のアジア大会、今大会と負けなくなってきました。
HEYDAROV,Hidayat選手 (AZE)も今大会は良かったですね。
女子57キロ級(芳田司選手:優勝(初優勝))
今回の芳田選手は、立ち技だけでなく寝技も良かったです。最後の詰めの甘さも見られず、出口選手にも勝ちきりました。立ってよし、寝てよしのいい柔道でした。
出口選手も安定していましたが、今回は芳田選手が一枚上でした。
DORJSUREN, Sumiya選手(MGL)は、やや衰えてきたのでしょうか。DORJSUREN, Sumiya選手に勝ち決勝に勝ち上がったSMYTHE-DAVIS,Nekoda選手 (GBR)、出口選手をあと一歩まで追い込んだSTOOLL,Amelie選手(GER)、団体戦に出場した玉置選手も良かったですね。
男子81キロ級(藤原崇太郎選手:2位)
藤原選手は粘りの柔道で決勝まで勝ち上がりました。日本選手がなかなか勝てない階級で見事でした。決勝は惜しくも敗れましたが、今後が楽しみです。組手を妥協せず、チャンスがあれば寝技で決めるスタイルは大崩れしないと思います。佐々木選手や永瀬選手との代表争いが楽しみです。
オリンピックチャンピオンのKHALMURZAEV, Khasan選手(RUS)の出来はいまひとつで、敗者復活戦で敗退でしたね。昨年のチャンピオンWIECZERZAK,Alexander選手(GER)は準々決勝で敗れ、何とか3位を確保でした。群雄割拠の81キロ級は誰にでもチャンスがあるといってもいいかも知れません。
女子63キロ級(田代未来選手:2位)
AGBEGNENOU, Clarisse選手(FRA)、TRSTENJAK, Tina選手(SLO)、っして田代選手がこの階級の3強で、頭ひとつ抜けています。田代選手は、TRSTENJAK, Tina選手に強くAGBEGNENOU, Clarisse選手に弱い。AGBEGNENOU, Clarisse選手はTRSTENJAK, Tina選手に弱いというように、三竦みの状態ですから、組み合わせが大きいですね。田代選手は、以前よりもAGBEGNENOU, Clarisse選手と戦えるようになってきていますので、2020東京では何とか今回の雪辱を果たして欲しいですね。今大会では、立ち技、寝技ともに抜群でしたから、この流れを継続していけば十分に可能だと思います。この3人の争いはまだまだ続きそうですね。
男子90キロ級(長澤憲大選手:3位)
長澤選手は2回戦、3回戦と順調でしたが、4回戦で疲弊しました。やはりパワー系の相手の対策が重要ですね。ここは何とか凌ぎ切りましたが、準々決勝では力尽きました。その状態から敗者復活戦、3位決定戦とよく勝ち上がり、メダルを獲得しました。今後は、パワー系の相手に組み負けない組み力と、スタミナが課題ですね。技は切れるだけに、それが備われば頂点も見えてくると思います。
海外勢は、昨年の世界選手権でベスト8に残った選手で、今大会でもベスト8に残った選手はTOTH,Krisztian選手(HUN)のみと大幅に入れ替わりました。決勝では敗れたものの、SILVA MORALES,Ivan Felipe選手(CUB)の攻撃的な柔道が魅力的でしたね。
女子70キロ級(大野陽子選手:3位、新井千鶴選手:優勝(2連覇))
大野選手は初の世界選手権ということで、やや緊張もあったでしょうが動きが硬く感じました。海外勢対策という点では、もう1歩だったでしょうかy。組手で後手に回る場面が多かったように感じます。
新井選手は窮地に追い込まれても、絶対に負けないという執念が随所に感じられました。準々決勝の隅落とし、準決勝の内股から大内刈り、決勝の逆転勝ちと何れも窮地に追い込まれてからの勝利でした。
世界チャンピオンになってからの1年間は、国内外の試合でもパッとせずモヤモヤした試合が続いていましたが、それを一気に吹き飛ばしましたね。
海外勢は、決勝を新井選手と争ったGAHIE,Marie Eve選手(FRA)は脅威ですね。ALVEAR,Yuri選手(COL)も体の力が強いです。昨年決勝を争ったPEREZ,Maria選手(PUR)は、やや力が落ちたのでしょうか。いずれにしても、新井選手とGAHIE,Marie Eve選手が中心となりそうな70キロ級です。
男子100キロ級(ウルフ・アロン選手:5位)
怪我から復帰のウルフ選手でしたが、出来は正直いまひとつでした。いつもの力強さに欠け、組手で後手に回るシーンも多く、受けのバランスも悪く感じました。昨年3位のDENISOV, Kirill選手(RUS)に勝ったのは流石ですが、ILYASOV, Niyaz選手(RUS)には一本負けとらしくない試合展開でしたね。3位決定戦も、あっけなく敗れてしまった感じがしました。実力はありますので、もう一度立て直して欲しいですね。
海外勢は、昨年2位のLIPARTELIANI,Varlam選手(GEO)が優勝しましたが、そこまで差があるような感じではなく、この階級も群雄割拠、誰が勝っても可笑しくない階級に感じます。
女子78キロ級(濱田尚里選手:優勝(初優勝))
濱田選手は得意の寝技だけでなく、今大会は立ち技も良かったですね。3回戦では技ありを先制され、さらに内股であわやという場面を上手く切り替えして抑え込んだのは見事でした。(3回戦動画)
準々決勝の寝技への入り方も簡単にやっていました、なかなか出来ないと思います。(準々決勝動画)
準決勝では課題の立ち技で一本勝ちし、決勝はスタミナで押し切りました。正直、優勝は厳しいと思っていた階級でしたが、途中のミスもなく優勝できて良かったですね。
世界チャンピオンのAGUIAR,Mayra選手(BRA)は調子が上がらず、早々に敗退。昨年ベスト8からはVERKERK,Marhinde選手(NED)のみが残ったものの、他は入れ替わっております。この階級も誰が勝っても可笑しくない状況に突入しましたね。
男子100キロ超級(原沢久喜選手:3位、小川雄勢選手:3回戦敗退)
原沢選手は慎重に戦っている印象でした。準々決勝は、勝てる試合を落としてしまった感じです。プレッシャーを掛けようとするあまり、不用意に前に出すぎてしまいましたね。以前の原沢選手では見られなかったミスだと思います。未だに本調子ではないのでしょうが、徐々に上向いている感もありますので、今後に期待したいと思います。
小川選手は勿体無い試合でした。腕の極め方が少し乱暴でしたね。その影響か、団体戦でもパッとしませんでした。海外勢に対抗できる体力とパワー、スタミナを兼ね備えているので、もう一度立て直して欲しいですね。
海外勢は優勝したTUSHISHVILI, Guram選手(GEO)が頭ひとつ抜け出していたように思います。逆にオリンピックチャンピオンのKRPALEK, Lukas選手(CZE)はもう一息でしたね。MOURA, David選手(BRA)、SILVA, Rafael選手(BRA)のブラジル勢、SASSON Or選手(ISR)もパッとしませんでした。
代わりにMOURA, David選手に勝ったOLTIBOEV,Bekmurod選手(UZB)や地元アゼルバイジャンのKOKAURI,Ushangi選手(AZE)の台頭がありましたね。
なかなか苦戦が続く100キロ超級です。
女子78キロ超級(朝比奈沙羅選手:優勝(初優勝))
朝比奈選手は堅実に勝ち上がり、勝ちに徹した試合運びでした。昨年末に無差別級の世界チャンピオンになったので、自信もあったのだと思います。ただ、攻めが遅いのは相変わらずで、指導を先に受ける場面が目立ちました。
海外勢は、息の長いORTIZ,Idalys選手(CUB)が世界ランク1位のKIM, Minjeong選手(KOR)を破り決勝に勝ち上がったのは見事でした。CERIC,Larisa選手(BIH)、SAYIT,Kayra選手(TUR)、KINDZERSKA,Iryna選手(AZE)など、他の階級に比べ比較的メンバーが代わらない傾向にあります。
団体戦では、素根選手も活躍し、朝比奈選手との代表争いが楽しみです。
男女混合団体戦(73キロ級 立川新選手、90キロ級 向翔一郎選手、90キロ超級 原沢久喜選手、小川雄勢選手、57キロ級 玉置桃選手、芳田司選手、70キロ級 大野陽子選手、70キロ超級 素根輝選手、朝比奈沙羅選手)優勝
団体戦はこのような試合形式に慣れている日本チームが優勝しました。通常の団体戦と違い、引き分けがありませんが、ここも戦略の上では面白いですね。
立川選手、玉置選手、素根選手は個人戦に出られなかった悔しさを十分に晴らしたと思いますが、向選手は世界の壁を感じたと思います。小川選手は、ちょっと覇気がなかったですね。
芳田選手の戦いぶりは、堂々としていました。そう考えるとメンタルって大切ですね。
団体戦の大野選手は、諦めない戦いぶりが印象的でした。
グランドスラム大阪や、来年の世界選手権、そして2020東京まで、時間があるようでありませんので、怪我のないように気をつけて稽古に精進して欲しいですね。
頑張れニッポン!