全日本学生柔道優勝大会(男子71回、女子31回)が6月25日、26日の2日間、日本武道館にて開催されました。
女子5人制、女子3人制、男子の決勝戦は、いずれも代表戦になる僅差の戦いでした。
特に男子決勝は代表戦になった時点で、国士舘大が有利と誰しも思ったはずです。
それを覆した村尾三四郎選手の技術力、精神力とも素晴らしかった。
現在のIJFルールは、どう考えても体重無差別の試合には向いておらず、軽量選手が重量選手(自分より体重が重い、階級が上に挑む場合)に挑む場合、相当に不利なルールですが、それを覆す戦いぶりに目から鱗が落ちた感じです。
組み合わせ
決勝
東海大 〇①対1(代表戦△ 国士舘大
先鋒 天野〇(優勢勝ち)△藤永
次鋒 鈴木 (引き分け) 斉藤
五将 菅原 (引き分け) 岡田
中堅 村尾 (引き分け) 中西
三将 工藤 (引き分け) 金澤
副将 中村 (引き分け) 熊坂
大将 安部△(優勢勝ち)〇高橋
代表 村尾〇(上四方固)△斉藤
先鋒 天野〇(優勢勝ち)△藤永
東海大が1年生のルーキー天野開斗(81キロ級 右組)選手、国士舘大は藤永龍太郎(90キロ級 左組)選手。
この試合は天野選手が引き込み返しで技ありを奪って優勢勝ちする殊勲の星を挙げました。
東海大としては何が何でも欲しい先制点を獲得した試合です。藤永選手は内股、出足払いが得意で、どちらかというとケンカ四つ得意な選手ですから、階級も違いますので最低でも引き分けと計算していたと思います。国士舘大にとっては痛い一敗でした。
藤永選手は体格差を生かし、密着して圧を掛けたかったのだと思いますが、天野選手は釣り手で適度に距離を取り上手く捌いていました。体勢を低くして密着しようとした藤永選手を見て、それまで釣り手を前襟で距離を取っていた形から、一転して背中越しに帯を取り前技のフェイントから横車気味の引き込み返しで投げました。前技のフェイントが思いのほか効いていたように感じます。副審の一人は一本を主張していましたが、やや勢いが弱かったか。
次鋒 鈴木 (引き分け) 斉藤
東海大が鈴木直登(100キロ級 右組)選手、国士舘大が全日本王者の斉藤立(100キロ超級 左組)選手。
鈴木選手は密着戦得意の選手で、通常であれば斉藤選手とのマッチアップは厳しい。
釣り手を動かし、引手も止めず一定の位置に固定されないように対応することで、斉藤選手の圧を逃し続けました。斎藤選手は膝の故障があったようで、瞬間的に距離を詰めたり、追い足が鈍かったですね。国士舘大にとっては痛い引き分け。
五将 菅原 (引き分け) 岡田
東海大菅原光輝 (100キロ超級 右組)選手、国士舘大が岡田陸(90キロ級 右組)選手。
この試合は菅原選手が体格的に優位で、しかも右の相四つ。岡田選手は引手で脇を突きながら得意の大内刈りで飛び込みます。そして時には菅原選手の釣り手を絞り、奥襟を徹底的に警戒します。この防御を菅原選手が突破できずに引き分けに終わります。東海大はここで1点欲しかった。
中堅 村尾 (引き分け) 中西
東海大主将の村尾三四郎 (90キロ級 左組)選手、国士舘大が中西一生(90キロ級 右組)選手。
同じ階級の対戦ということで、普通に考えれば村尾選手が有利ですが、中西選手は村尾選手の釣り手の前腕を上から抑え、上げさせないように取り組み、村尾選手得意の内股、大内刈り、大外刈りを防ぎます。下から持たざるを得ない時は、距離を徹底的に取り、村尾選手の射程圏内に入らないようにします。距離が詰まった一瞬に村尾選手が大内刈りで追い込むと、足を抜きながら背負投げで切り返しヒヤッとさせます。村尾選手が大内刈り、中西選手が巴投げと同時に掛け合いますが、ビデオ判定の結果、ノーポイント。そしてこのまま引き分け。東海大は痛い引き分け。
三将 工藤 (引き分け) 金澤
東海大が工藤海人 (100キロ級 右組)選手、国士舘大が金澤聡瑠(100キロ級 右組)選手。
この試合も同階級の対戦となり、身長に勝る金澤選手が押し気味に進めるも決定打を欠き、工藤選手が凌ぎ切ります。
副将 中村 (引き分け) 熊坂
東海大が次世代のエース候補の中村雄太 (100キロ超級 右組)選手、国士舘大が主将の熊坂光貴(100キロ級 右組)選手。
体格で上回る中村選手が基本優位ですが、熊坂選手も強化選手選考会で優勝し、勢いがあります。両者とも激しい組手争いで主導権を奪おうとします。がっぷり組み合うと不利な熊坂選手は組み際勝負を志向し、中村選手は組み止めることを志向します。熊坂選手は奥襟を持たれても頭が下がらず食らいつきます。共に決定的なチャンスを作れず引き分け。
大将 安部△(優勢勝ち)〇高橋
東海大が安部光太 (90キロ級 左組)選手、国士舘大が高橋翼(100キロ超級 右組)選手。
体格差のある対戦となります。高橋選手は技あり以上を奪わない限りチームの勝ちがなくなります。高橋選手は背中を持って引き寄せ引手は襟、得意の小外掛けを狙いつつ圧を掛け、阿部選手もこの形を受け入れ、脇下から背中を持ちます。やや高橋選手が狙いすぎ、膠着状態に陥ります。このまま引き分け濃厚となった終了間際、それまで相手の体勢に合わせ腰が曲がっていた高橋選手が、上体をおこして密着すると安部選手が大内刈りで足を差し込んでしまいます。これは高橋選手にとって願ったり叶ったりの形。大内返しに切って取り起死回生の技あり。
代表 村尾〇(上四方固)△斉藤
代表は両校ともにエースが選ばれます。
試合の流れとしては、先制したものの五将、中堅、副将と追加点を挙げられず、大将戦でついに追いつかれた東海大に対し、苦しみながらも追いついて意気上がる国士舘大という構図。
しかも全日本王者の斉藤選手が170キロ、村尾選手は90キロと体重差があり、しかも左の相四つ。現状のIJFルールでは体格差のある戦いは小さい方が不利です。代表戦が始まる前から、両ベンチの状況は好対照。
しかし、試合が始まるとそれが一変します。
斉藤選手は組手に拘り過ぎず、とにかく捕まえることを優先します。それに対し村尾選手は斉藤選手の釣り手を低い位置で抑えます。
この釣り手の位置では技の効果が半減です。それでも前に出て斉藤選手が攻めますが、徐々に体力が削られます。奥襟にもアプローチしますが、ことごとく村尾選手が落とすことに成功。これが勝敗の分かれ目だったと思います。
村尾選手の頭は常に斉藤選手の釣り手を抑える位置にありました。斉藤選手は、支え釣り込み足を使うなどして、この釣り手の位置を上げたかったところです。
村尾選手の鋭い大内刈りはもう一歩でポイントという技でしたが、これで斉藤選手が慎重になった気がします。
ゴールデンスコアに入り、スピードで徐々に差が付き、斉藤選手は足も前に出なくなります。このあたりは故障の影響があったのではないでしょうか。同一方向の技が多く、受ける村尾選手が的を絞りやすかったのもあったでしょう。
最後は力尽きた形で終わりましたが、両者とも持てる力を振り絞った熱い戦いでした。
個人戦で、このような試合になることもありますが、団体戦ならではの試合展開だったのではないでしょうか。
応援してくれる仲間の思いを感じながらの戦い、見る物を感動させてくれます。
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女子5人制、女子3人制、男子の決勝戦は、いずれも代表戦になる僅差の戦いでした。
特に男子決勝は代表戦になった時点で、国士舘大が有利と誰しも思ったはずです。
それを覆した村尾三四郎選手の技術力、精神力とも素晴らしかった。
現在のIJFルールは、どう考えても体重無差別の試合には向いておらず、軽量選手が重量選手(自分より体重が重い、階級が上に挑む場合)に挑む場合、相当に不利なルールですが、それを覆す戦いぶりに目から鱗が落ちた感じです。
組み合わせ
決勝
東海大 〇①対1(代表戦△ 国士舘大
先鋒 天野〇(優勢勝ち)△藤永
次鋒 鈴木 (引き分け) 斉藤
五将 菅原 (引き分け) 岡田
中堅 村尾 (引き分け) 中西
三将 工藤 (引き分け) 金澤
副将 中村 (引き分け) 熊坂
大将 安部△(優勢勝ち)〇高橋
代表 村尾〇(上四方固)△斉藤
先鋒 天野〇(優勢勝ち)△藤永
東海大が1年生のルーキー天野開斗(81キロ級 右組)選手、国士舘大は藤永龍太郎(90キロ級 左組)選手。
この試合は天野選手が引き込み返しで技ありを奪って優勢勝ちする殊勲の星を挙げました。
東海大としては何が何でも欲しい先制点を獲得した試合です。藤永選手は内股、出足払いが得意で、どちらかというとケンカ四つ得意な選手ですから、階級も違いますので最低でも引き分けと計算していたと思います。国士舘大にとっては痛い一敗でした。
藤永選手は体格差を生かし、密着して圧を掛けたかったのだと思いますが、天野選手は釣り手で適度に距離を取り上手く捌いていました。体勢を低くして密着しようとした藤永選手を見て、それまで釣り手を前襟で距離を取っていた形から、一転して背中越しに帯を取り前技のフェイントから横車気味の引き込み返しで投げました。前技のフェイントが思いのほか効いていたように感じます。副審の一人は一本を主張していましたが、やや勢いが弱かったか。
次鋒 鈴木 (引き分け) 斉藤
東海大が鈴木直登(100キロ級 右組)選手、国士舘大が全日本王者の斉藤立(100キロ超級 左組)選手。
鈴木選手は密着戦得意の選手で、通常であれば斉藤選手とのマッチアップは厳しい。
釣り手を動かし、引手も止めず一定の位置に固定されないように対応することで、斉藤選手の圧を逃し続けました。斎藤選手は膝の故障があったようで、瞬間的に距離を詰めたり、追い足が鈍かったですね。国士舘大にとっては痛い引き分け。
五将 菅原 (引き分け) 岡田
東海大菅原光輝 (100キロ超級 右組)選手、国士舘大が岡田陸(90キロ級 右組)選手。
この試合は菅原選手が体格的に優位で、しかも右の相四つ。岡田選手は引手で脇を突きながら得意の大内刈りで飛び込みます。そして時には菅原選手の釣り手を絞り、奥襟を徹底的に警戒します。この防御を菅原選手が突破できずに引き分けに終わります。東海大はここで1点欲しかった。
中堅 村尾 (引き分け) 中西
東海大主将の村尾三四郎 (90キロ級 左組)選手、国士舘大が中西一生(90キロ級 右組)選手。
同じ階級の対戦ということで、普通に考えれば村尾選手が有利ですが、中西選手は村尾選手の釣り手の前腕を上から抑え、上げさせないように取り組み、村尾選手得意の内股、大内刈り、大外刈りを防ぎます。下から持たざるを得ない時は、距離を徹底的に取り、村尾選手の射程圏内に入らないようにします。距離が詰まった一瞬に村尾選手が大内刈りで追い込むと、足を抜きながら背負投げで切り返しヒヤッとさせます。村尾選手が大内刈り、中西選手が巴投げと同時に掛け合いますが、ビデオ判定の結果、ノーポイント。そしてこのまま引き分け。東海大は痛い引き分け。
三将 工藤 (引き分け) 金澤
東海大が工藤海人 (100キロ級 右組)選手、国士舘大が金澤聡瑠(100キロ級 右組)選手。
この試合も同階級の対戦となり、身長に勝る金澤選手が押し気味に進めるも決定打を欠き、工藤選手が凌ぎ切ります。
副将 中村 (引き分け) 熊坂
東海大が次世代のエース候補の中村雄太 (100キロ超級 右組)選手、国士舘大が主将の熊坂光貴(100キロ級 右組)選手。
体格で上回る中村選手が基本優位ですが、熊坂選手も強化選手選考会で優勝し、勢いがあります。両者とも激しい組手争いで主導権を奪おうとします。がっぷり組み合うと不利な熊坂選手は組み際勝負を志向し、中村選手は組み止めることを志向します。熊坂選手は奥襟を持たれても頭が下がらず食らいつきます。共に決定的なチャンスを作れず引き分け。
大将 安部△(優勢勝ち)〇高橋
東海大が安部光太 (90キロ級 左組)選手、国士舘大が高橋翼(100キロ超級 右組)選手。
体格差のある対戦となります。高橋選手は技あり以上を奪わない限りチームの勝ちがなくなります。高橋選手は背中を持って引き寄せ引手は襟、得意の小外掛けを狙いつつ圧を掛け、阿部選手もこの形を受け入れ、脇下から背中を持ちます。やや高橋選手が狙いすぎ、膠着状態に陥ります。このまま引き分け濃厚となった終了間際、それまで相手の体勢に合わせ腰が曲がっていた高橋選手が、上体をおこして密着すると安部選手が大内刈りで足を差し込んでしまいます。これは高橋選手にとって願ったり叶ったりの形。大内返しに切って取り起死回生の技あり。
代表 村尾〇(上四方固)△斉藤
代表は両校ともにエースが選ばれます。
試合の流れとしては、先制したものの五将、中堅、副将と追加点を挙げられず、大将戦でついに追いつかれた東海大に対し、苦しみながらも追いついて意気上がる国士舘大という構図。
しかも全日本王者の斉藤選手が170キロ、村尾選手は90キロと体重差があり、しかも左の相四つ。現状のIJFルールでは体格差のある戦いは小さい方が不利です。代表戦が始まる前から、両ベンチの状況は好対照。
しかし、試合が始まるとそれが一変します。
斉藤選手は組手に拘り過ぎず、とにかく捕まえることを優先します。それに対し村尾選手は斉藤選手の釣り手を低い位置で抑えます。
この釣り手の位置では技の効果が半減です。それでも前に出て斉藤選手が攻めますが、徐々に体力が削られます。奥襟にもアプローチしますが、ことごとく村尾選手が落とすことに成功。これが勝敗の分かれ目だったと思います。
村尾選手の頭は常に斉藤選手の釣り手を抑える位置にありました。斉藤選手は、支え釣り込み足を使うなどして、この釣り手の位置を上げたかったところです。
村尾選手の鋭い大内刈りはもう一歩でポイントという技でしたが、これで斉藤選手が慎重になった気がします。
ゴールデンスコアに入り、スピードで徐々に差が付き、斉藤選手は足も前に出なくなります。このあたりは故障の影響があったのではないでしょうか。同一方向の技が多く、受ける村尾選手が的を絞りやすかったのもあったでしょう。
最後は力尽きた形で終わりましたが、両者とも持てる力を振り絞った熱い戦いでした。
個人戦で、このような試合になることもありますが、団体戦ならではの試合展開だったのではないでしょうか。
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