競った試合が山場に差し掛かり、決着がようやくついて緊迫した場面から開放された瞬間、無意識にガッツポーズを取ってしまうことを経験したスポーツ選手は多いと思います。


夏の甲子園の2回戦、創志学園のエース西投手は主審から「必要以上にガッツポーズをしないように」と注意されたそうです。
8回にも同様の注意があり、リズムが崩れたそうです。


柔道でも、試合に勝った者が過度のガッツポーズをすると咎められます。
ルール上では、審判や相手の人格を無視するような言動をすることという項目があり、反則負けに該当します。


野球のルール上はガッツポーズの禁止という項目はありませんが、マナー上の問題とも言われています。
どこまでを認めて、どこからを認めないのかというのは難しい問題です。
卓球でも起こりそうな議論ですね。


私は甲子園のガッツポーズを見ていないので何とも言えませんが、何でもルールに明記するというのも難しいのではないかと思います。

相手をリスペクトするということを忘れては、対人競技全ての根底が崩れてしまいます。


今夏のインターハイの柔道競技、男子個人戦の66キロ級決勝は、桂嵐斗選手(長崎日大)と西願寺哲平選手(埼玉栄)の対戦となりました。

この二人は、2015年の全国中学校柔道大会で、桂選手が60キロ級、西願寺選手は66キロ級で優勝し、高校時代には揃って66キロ級で活躍しているライバル同士の選手です。

桂選手は全日本カデで優勝し、この試合の準決勝で両者は対戦しています。
ゴールデンスコアで桂選手が西願寺選手を振り切り、そのまま優勝しました。
そして世界カデのタイトルも取りました。

西願寺選手は、1年のインターハイ66キロ級でベスト8(桂選手は1回戦敗退 相手は西願寺選手が負けた相手)、高校選手権は優勝(桂選手は3回戦敗退)、インターハイは3位(桂選手は不出場)、高校選手権は優勝(桂選手は2回戦敗退)という活躍ぶりでした。

そしてこの二人の決勝は、一進一退の手に汗握る攻防でした。
残り19秒で西願寺選手を内股をめくり返して技ありを奪い、優勢勝ち。

昨年の大会で、ひとつ上の山口選手が決勝で敗れ、インターハイチャンピオンになり損ねていたので、リベンジ成功、ライバルにも勝って大々的にガッツポーズを決めてもいい状況でしたが、桂選手はガッツポーズもせず、勝利を噛み締めていたそうです。


個人的に、ガッツポーズが自然と出る状況は好きです。
でも、桂選手のような姿も素敵ですね。

長崎日大の松本監督は桂選手の勝因を次のように自身のフェイスブックで語っていました。
人間的に大きく成長したことが、優勝の一因だと思います。ゴミを拾う、周りを気遣う、雑用をこなす。強い選手にありがちな、嫌がる事も率先してやるようになった。それが、大願成就の源かなと思います。

表彰式での写真は、決勝を争った二人の微笑ましいシーンが納められていました。

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(写真は長崎日大 松本監督のブログよりお借りしました)

ガッツポーズを否定も肯定もしませんが、やはり出しどころを間違えてはいけないのかなとも思います。
これはルール云々ではないのではないでしょうか。

この二人の写真を見ていたら、これからもいいライバルとして競い合うのだろうなと思いますね。


66キロ級には、阿部一二三選手や、桂選手の先輩に当たる筑波大の田川兼三選手など、強豪選手が多い階級です。
二人で切磋琢磨し、怪我せずに成長して、何度も今回のような熱い戦いをして欲しいですね。


ちなみに、今回の決勝の主審を務めたのは、「すべての局面を「投げ」で解決!背負投の入り方57」の著者内村先生。
見事な審判でした(笑)

すべての局面を「投げ」で解決!背負投の入り方57
内村直也 Naoya Uchimura
株式会社eJudo
2017-06-30